うだ話35


     うだ話35  遺跡の保存  林檎の皮?

1.史跡指定

発掘調査終了後に史跡指定、保存、しばらくして史跡整備って流れがありますが、基本的に私はこれには納得できません。

開発に伴って行う発掘調査は、記録保存のために徹底的に調査します。よって終了後に残るのは、溝や住居跡などの穴だけ。これが遺跡と言えるのでしょうか?遺構のあった痕跡だけですよ。

たとえば、古墳で築造の状況を記録するために、放射状なりに土層確認用のベルトを残して徹底的に掘削して、ベルトだけになったものを残しで意味があるのでしょうか?

遺跡とは現地表面までの土の堆積、遺物のあり方が遺跡であって、遺物も遺構もなくなってしまったものは遺跡跡(いせきあと)。

開発に伴う発掘調査では基本的に調査費の負担者は開発者です。所謂、原因者負担。開発者の営利なりを目的として遺跡の一部を開発する、国民の共有財産である埋蔵文化財の一部を消滅させる、それによって益を受ける開発者がその調査費を負担するって建前ですね。(これは法によって規定された制度ではありません。)

開発者はその土地で開発、建築ができる、それによってこれだけの利益が上がると計画して、事業を実施して、調査費を負担されています。それがですよ、調査の最終になって、「史跡にします、開発はできません。」って言われて、納得できますか?

こうなると調査費だけでなく、その事業にかかった土地売買費用、開発事前調査費や設計、管理費すべて無駄になります。企業の場合はすべて損益。損益繰り入れで税金の控除は受らけれても、税額なんてしれた金額。その開発者のプロジェクト担当者なりの責任問題になりかねません。へたすると、その開発企業なりが倒産という最悪の事態も招きかねません。

史跡指定された後、その部分は公有地にするため買い上げられて、一定費用の還元があると言っても、全体経費の一部分だけでしょう?

大きく2つのことで書きましたが、やっぱりはじめの理由、痕跡だけでは遺跡と言えないが一番大きな理由としてあげられます。

林檎の中身は食べ、皮(遺跡跡)だけ残して林檎を残したって言えますか?

開発行為に伴う発掘調査を行った部分は、史跡にはすべきではないというのが、個人的な意見です。その上に、復元でもない復元住居をつくるなんて、とんでもないはなし。

(ただ、公共事業の場合は、最終的な受益者は国民、市民であり、税金で調査費がまかなわれていますので、上記の限りではありません。土地もすでに公有地ですし。)


2.林檎の皮だけにしないこと

文化財保護法にある現状保存と言う建前は、開発との最初の協議段階でまず出されていると思います。遺跡に影響を与えないように設計変更をお願いすること。

しかし、これでは話が前に進みませんので確認調査を行うのが通常でしょう。 何ヘクタールにも及ぶ大開発では、確認調査だけで2,000平米や3,000平米なんて確認調査面積になるのは当たり前?場合によっては、10,000平米なんてこともあり得ますよね。この面積って、中規模以上の本調査に匹敵しますよね。

よって、この段階まできて、遺跡の価値判断ができないこと自身がやはりおかしい。周知の遺跡にあっては、他の部分とあり方が突出していることがわかれば、史跡指定を視野に入れて、開発者と忍耐強く協議すべきです。

公共事業の場合、道路や大型開発に関しては、都市計画法にもとづいて都市計画決定をし、用途地域を変更してますので、変更はほとんど不可能と思います。この段階までで、何回も公聴会なりを開いて地元説明を行い、数年かけて都市計画決定してますので。

ただ、吉野ヶ里遺跡などの大遺跡とその他の小規模の弥生遺跡では、確認調査での検出遺構、出土遺物数は雲泥の差があると思います。調査トレンチの中に多数の環濠が検出できて、土器もどんどん出土する。小さな遺跡の場合は、トレンチに溝跡などが検出できるか、できないか、土器がちょろちょろ数点出土が関の山?

確認調査で大量遺構、遺物の存在が確認できても、やはり開発計画の変更ができないとなると本調査に移行します。重要遺跡であることがわかったのら、ここから調査と公開の体制を、これまであるような調査とは変更すべきでしょう。調査委員会の組織は無理としても、遺構のあり方を逐次開発者に報告し、定期的に現地説明会を行う。早く世間一般に知ってもらう努力を行う。それと、遺構を全掘するのではなく、部分発掘していく。史跡指定された後にする方法、遺構を残しながら部分発掘を進める方法です。全掘してしまうと「林檎の皮」です。開発目的の記録保存のための調査ではなく、史跡指定にむけての資料収集のための調査を目指すべきです。

この資料をもって本調査の初期段階、遅くとも中間段階までに、史跡指定の結論を出すべきです。それと、この段階から調査費は調査側の公費負担に切り替える。できるならば、そこまでに使った調査費について、公費からの支出とする必要があります。益を得ない者に調査費を負担させることは原因者負担のあり方からもはずれます。(国、都道府県は、この段階での史跡指定の話は聞いてくれないでしょうね。といって市史跡ではもっとも困難が伴いますし・・・・。)

ここまですると、開発者にとっての負担も最小限にくい止められますし、遺跡も「林檎の皮」にならなくてすみます。

さて、現状の埋蔵文化財保護体制では、こんなことはできない、論外だと、速攻で非難されるでしょう。(無視されるのが通常?)

文化財保護法の埋蔵文化財に関する規定や文化庁からの通達は「遺跡処理」を前提に策定されていますので、迅速に協議して、発掘調査を進めるかが主眼ですよね。「・・・・迅速化」が数年に一度でることがよい例でしょう。担当者レベルでは、調査期間、調査費を何とか確保するにも四苦八苦している、調査に追われて精一杯と言う意見が主でしょうね。

ただ、「林檎の皮」にしないようにすることに関しては、ご理解いただけると思います。調査することが主眼ではなく、市民利益の保護と文化財の保護を調整するのが、専門能力を有する文化財保護行政担当者(専門職、技師)の義務であることも理解していただけると思います。調査ありきではなく協議ありき・・・1にも2にも協議、常に協議。

以上、理想と現実の入り交じったものになりましたが、論文ではないのでご容赦。


前半が「思い」で後半が「理想論」です。この不景気のなか、民間開発では遺跡内部での開発をしない方向に進んでいます。よって、購入予定開発地の事前調査(遺跡に入っているか)の問い合わせが非常に多いです(少し前までは競売物件の事前調査でしたが。)。異口同音に「遺跡の中の土地は買わない!」です。遺跡内での開発で設計変更を行い、現状保存の方向で話が進むケースを以前書きましたが、今、さらに一歩進んだ状況になりつつあります。協議することが重要になっている現在において、この理想論も実現可能かもしれません。

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