うだ話38


     うだ話38  弥生時代のイノシシ類にみられる地理的多様性

姉崎智子「弥生時代のイノシシ類にみられる地理的多様性」動物考古学第21号 2004 動物考古学研究会

これまで何度か発表されたものをまとめたものと思われる。発表を直接聞く機会は1度であったため、期待しつつ読み始める。関東から九州にかけての12遺跡の出土イノシシ資料をつかい、弥生時代のイノシシについて論じている。

第一の感想として、タイトルの「地理的多様性」が全く示されていない点。地理的というのであれば、山間部、平野部、海岸部など、異なる地理条件に立地する遺跡において、その地理条件がイノシシのあり方に反映しているなりの考察が必要であるが全く無い。内容をみると九州地域、中国地域、近畿地域、関東地域とあるので、「地理」ではなく「地域」を認識している。そうであるならは、「地域的多様性」「各地方の多様性」他のタイトルにすべきである。よって、このタイトル「地理的多様性」は本論文のタイトルとしては不適格であると言えよう。

分析については、これまで視点としてあげられている点のほとんどをもちい、各遺跡について比較検討しており、その結果については傾聴に値する。ただ、考察以降になると失速した感が否めない。 東日本と西日本でイノシシのあり方が異なる、遺跡間でも年齢構成が異なるなど、先学諸氏、本人なりが既に指摘している点を追認しているだけであり、最終的に臼歯のあり方から吉野ヶ里遺跡のイノシシ類が他地域からの搬入であることを結論付けているだけである。おわりにおいて、Ancient DNAの分析結果を自説?の補強に使用している点、非常にあやうい。

私も以前同じような各遺跡間の出土資料を集成比較した経験をもつ(ただ、これだけの視点で多くの遺跡を比較したわけではないが・・・)。その後、様々な分析に触れ至った結論は、出土獣骨のように遺存する条件が非常に限られる遺物に関しては、まず遺跡内部での検討が必要であるとの視点が必要であると言うこと。地域においてどのような位置付けができる遺跡のどのような部分から出土したものなのか、その獣骨のあり方がその遺跡を代表する傾向を示しているのかの検討がまず必要であると考える。

遺跡に関しては、地域の拠点的な集落か小集落かで、構成人口、生産性が異なる。人口構成の違いによってもすべての遺物のあり方が異なり、飼料を必要とする家畜の扱いも集落での食料生産性と大きく関わってくる。遺跡内での発掘調査地点の違いも出土遺物に大きく反映する。特定のゴミ捨て場を持たない弥生時代集落において、集落部の縁辺部と中心部では遺物の出土状況が全く異なる。特に遺存する可能性が地下水位などに影響されやすい獣骨では、出土する遺構自体が限定される。よって、遺跡内での評価を行うことが必要となる。これらの部分を行わず、獣骨だけの分析でその遺跡の平均的なあり方であるようにして資料を用いて、さらに地域の代表のように扱うことは、事実とは全く違う結論を導きかねない。これらは土器などの分析においても同様のことが言えるが、遺存条件が土器以上に厳しい獣骨の場合は、さらに注意を必要とする。

報告書での出土獣骨の報告内容を見ていると、獣骨だけを集成して、分類、同定、位置付けをしているものがほとんどある。集成表をもとに、遺構の記述を探そうにも記載されていないものが多い。と言うことは、調査報告者と獣骨分析者は同じ認識の元に報告書を作成しているのではなく、担当者は主要な遺構と遺物、分析者は獣骨だけという認識になっていると考える。これでは、出土獣骨のその調査の中での位置づけができていないと言えよう。位置付けのできていないものを、その遺跡のあり方、その地方のあり方とするのは非常に危険であると考える。

今回は、たまたま目にした姉崎女史の論功を例にとったが、動物考古学研究全般に言える傾向であり、この点苦慮している。また、安易に科学分析を援用する点も。

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