うだ話44


     うだ話44  文化財保護法の理解と現状

以下、思うところを箇条書きに・・・。

私が関係している市は、人口約9万人、大阪湾から和泉山脈にかけて東西に長くのびるところです。海あり山ありで、まだまだ自然も多い環境的には住みやすいところです。近世にあった村もそのままあって、同じ名字の人たちが同じ村に住んでいます。よって、名字を聞くと出身地、住んでいる大字が分かります。さすがに、海浜部は鉄道や幹線国道が通っていますので、近代以降の開発で様変わりはしています。

こんな状況なので、村々には近世の建物や古文書が沢山残っています。旧の庄屋さんや村年寄をされていたお家に古文書調査にうかがうと、あれビックリの状態です。外から見ていたら新しいので、建て替えたのかな?と思い、いざお家に入れていただくと、太い柱に太い梁。「え?これってひょっとして江戸時代の建物?」に質問に、「ちょっと改築しました。」とのお答え。これだけ市内に古いお家が残っているとは考えてもいませんでした。本題の古文書。「量はそんなにないので、見に来てくれませんか?」との依頼だったので、行って見ると長持満杯の古文書。大部分は保管されているだけですが、水利や土地問題が起きると、その古文書なり村絵図を使っているんです。よって、現用書類扱いなんです。

その他にも、旧村の古文書を代々の町会長さんが持ち回りで保管しているってことはざらでして、これも上記みたいな問題が起きると、参照されています。話が込み入ってくると、古文書の解読依頼がしょっちゅうあります。これで、未確認だった古文書が発見される場合も多いので、こちらにとっては大助かり。

と言うように、一般的に文化財と考えられるようなものが、ここでは大部分が「現用」、生活に必要なもの、生活の中に組み込まれているのです。自分たちに必要なもの、先祖が大事に守ってきたものなので、これからも守って行かないと皆さんお考えになっています。

そこで面白いことがあります。自分たちに必要なもの、祖先や自分たちが生きた証だからという気持ちの時は、自分たちで大切に守っていかなければと思っておられます。

ところがです、問い合わせなどでお話していて、「大切な文化財ですから、これからも守って行ってくださいね。」と言うと、「え?文化財?だったら、国や行政で面倒見てもらわないと・・・!。」となります。皆さん、文化財保護法に「国民の共有財産」と書いていることは知らなくても、「文化財=国民のもの」という認識はしっかり持っておられ、「文化財だったら国で守らないと・・・!」という認識になります。よって、私たちは「皆さんや地域にとっての大切な宝、歴史資料ですから。」と説明するようにしています。


阪神・淡路大震災で、こちらの方もだいぶ被害がありました。震災当日、対岸では煙がもくもくあがっているのを確認しながら、当時の係長が市内を奔走し、約200件の旧家に屋根瓦が大幅にずれたり、屋根自体が落ちたりの被害を確認しました。特に貝塚寺内にあった江戸時代から明治期にかけての旧家の被害がひどく、完全に傾いたり、屋根自身がごっそり落ちたりしました。被害のほとんどは寺内のものでした。

この後の対応が大変。寺内の建物は幕末等は普通の建物扱い。17世紀末から18世紀初頭建築かというお家が2件あり、一件は建物全体が傾く、もう一件は屋根が全壊状態。屋根全壊した方は今住んでいるお家なので修理しない訳にはいかず、元の本瓦葺にするか、桟瓦葺にするか、こちらに相談にこられた上で判断され、結局桟瓦葺になりました。これでも費用は私の給与年総支給額の5年分ぐらいに相当します。本瓦葺にすると桁がさらに一桁あがる費用がかかります。

他のお家はどうかというと、ほぼすべて取り壊されました。このとき文化財保護法が何かの役にたったかと言えば否です。

築150年とか200年とかだと立派な有形文化財ですよね。でも、その前に個人所有物であり、第一防災上の危険性が発生しています。蔵が隣に家によりかかった家もあり、所有者もお隣もびっくりの状態でした。

このとき文化財だから守ってください、修理してくださいなんてとても言えません。解体費用を工面するにも四苦八苦している人にですよ。震災被害の地区にもならないので、行政からも何の補助もでません。これまで守ってきた家だから何とかしたいと悩まれた方もいらしたようですが、それどころではない。2次災害の危険性もあるのですから。文化財部局としても補助金は出せない。

結局、すべて解体され、今、ほとんどが青空駐車になってます。(青空駐車場なので、発掘調査もできない・・・。)

いくら文化財保護法の総説の部分で分類されて、所有者の心構えが書かれていても、何の役にも立たない。解体中止の勧告もできない、修理の補助金もだせない。ただ、お願いするだけ、守ってくださいと。結局、国宝や重要文化財にならないことには、全く意味がないのです。

普通、法律は、趣旨があって、その法律で扱う分類があって、各位の義務なりがうたってある。その後に、分類にあるものについて細々と規定がある。法律で細々書けないものは、施行規則なりを定めて、提出書類の様式まで決めます。ところが、文化財保護法は分類にあるもので規定を定めているのは、国宝や重要文化財などの指定文化財と埋蔵文化財のことだけ。分類しっぱなしで、扱いを何も書いていない。第一、うちみたいに古文書が現用書類であった場合、この古文書は有形文化財ではない。よって、実態のないもの、分類だけのもので、法律が適用されるとは到底言えないのです。

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