うだ話45


     うだ話45  ヒストリア191号  大阪歴史学会 2004

先日、職場にて購読している上記書籍を拝読。会の活動報告の中で取り上げられていた埋蔵文化財の部分が、とても気になったのでうだ話・・・。

160−161頁の[3]遺跡・遺物・歴史的景観などの保存と活用

民間開発の件や国史跡申請、発掘調査と遺跡保存について、いろいろ意見が述べられていました。しかし、調査後の行政の対応が悪いとの指摘ばかりで、それ以前の労力の部分が全く評価されていません。

旧篠山町(兵庫県)の八上城・法光寺城遺跡群保存問題は、国指定史跡の申請を篠山市が行うとのことで方向性が出されたが、その後の進展がないとのこと。国史跡に関しては、県や文化庁の意向が大きく、市で申請準備をしていたとしても、関係団体の反応が無い場合、市としては全く手だてがありません。また、史跡の場合は指定地公有地化の問題もあり、権利関係、法手続、予算関係と細かい計画が必要となります。県なり文化庁なりが、市の話にのってこない限り、末端行政としては、当ての無い話の計画をつくり、予算化するわけにもいかず、これら官庁に根気強く要望していくしか方法はないのでは。

泉佐野市(大阪府)の日根荘のほ場整備に関して、市、文化財部局ともに開発の方向で動いているとの批判。細かい事象は述べられずに、この開発推進の一点だけを批判対象としています。広大なほ場整備の場合、調査・計画が進展し、常に協議を行えば保存地区を決めたり等の計画変更が可能。現状のまま、のどかな農村地帯として保存することも大切ですが、一定形は変るものの遺構保存緑地なりができ、より具体的に歴史にふれあう場所ができるほうがより望ましいのでは? 開発=遺跡破壊=文化財保護でない的な単純発想で批判されると困惑するばかり。また、発掘調査に至る段階でも多くの労力が割かれており、現状の発掘調査から貴重な遺構が眠っていることがわかったのであり、この労力への配慮がほしいところ・・・。これからもまだまだ労力が必要ですし。

大和古墳群、平城京(奈良県)での道路建設は全くこの通り。ただ、もう少し具体的に書いても良かったような? でも、なぜ重要遺跡があるのがわかっているところにわざわざ道路を計画するのか、私には理解できません。

久留倍遺跡(三重県)、根来寺坊院跡(和歌山県)、楠・荒田町遺跡(兵庫県)は、新規に保存要望を開始したとのこと。楠・荒田町遺跡については、発掘調査の結果を受けて、開発者が設計変更し、遺構を守る工法をとった上で、現状にて埋没保存することについて批判している。この通常のあり方がのどこが非難対象になるのか、私は全く理解できません。活用にほど遠いと批判していますが、一度発掘し、その上に建築物がある地点をどのように活用せよというのでしょうか? 調査から設計変更に至るまでの開発者、行政側の努力(特に開発者は発掘調査費用を負担した上に設計変更等の費用負担もあり2重になっている。)が全く無駄なような書き方は理解の範囲を超えます。

宝菩薩院廃寺湯屋遺構保存(京都府)も埋没保存という行為を消極的な態度と批判している。埋没保存のどこがいけないのか?史跡公園にするにしても、遺構の上に2mなりの保護層で埋没保存する。埋没保存がダメということになると、全ての指定史跡の保存方法が間違っているということになりませんか?

八十塚古墳群・徳川大坂城東六甲採石保存問題(兵庫県)で、調査にこぎつけた行政を評価する(やっとです)。ここでは行政の取り扱い云々よりも、事前着工について批判し、埋蔵文化財に対する逆風は続いていると結ぶ。逆風というか、遺跡の保存か現代人の生活の快適さを求めるかは常に争点になるところであり、逆風と表現するのはいかがなものか? 順風になることはまずないと考えます。(逆風、順風の定義が問題になりますが・・・。) この件は新聞報道以外に「古代学研究」166 2004に掲載されています。


文化財保護法の手続きを無視する、協議を尊重せずに事前着工するは、有ってはならないことです。 しかし、ここで述べられている批判のように、開発=遺跡破壊=文化財保護でない=悪!的な意見を述べられると、現在に生きる私たちの活動全てを非難しているように聞こえます。今回、遺跡の埋没保存批判が目につきますが、一体どうしたいというのでしょう?発掘調査した後、そのまま地表面に置いておけということなのでしょうか? そんなことをしたら、あっちでもこっちでも調査した部分がぽっかり深い状態で残され、危険でしょうがない。第一、樹脂コーティングでもしない限り、風雨で最後に残った遺構の痕跡?がどんどん削られていきます。コーティングしても乾燥でひび割れますが・・・。それとも史跡公園をどんどん作れと? 上部構造の分からない遺構から復元住居をつくっても意味無いような?

あまりに一方的な極端な話なので、文化財部局で働く側にとっても、理解できないものがあります。開発側、保存側ともにどんどん意見を出してもらって、現代人の生活を守りながら、遺跡を保護、保存する必要が有るのでは考えます。ただ、あまりに極端な話ばかりをしていると、誰にも相手にされなくなりますよ・・・(私か〜(汗))。それと、調査なり、工法変更なりにこぎつけるだけでも大変なんですから、もうちょっとその部分を評価して欲しいと思いました。

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