うだ話63


     うだ話63  縄文時代の狩猟を考える

・長谷川 豊 2005 「縄文時代土坑「落し穴」説への疑義」『歴史智の構想』鯨岡勝成先生追悼論文集刊行会

・長谷川 豊 2006 「縄文時代の多雪地域におけるシカ猟・イノシシ猟−東北・北陸の資料集成とその基礎的な検討−
              『往還する考古学』近江貝塚研究会論集3


前者は、縄文時代に丘陵部で見つかる「落し穴」とされる土坑についての批判である。これらの遺構が単純にイノシシ・シカ猟のための落し穴とはできないことを、両種の分布域、積雪量、肉のうまみ、石族から検討し批判したものである。

さらに、縄文時代に落し穴を用いたシカ猟・イノシシ猟がおこなわれたことを主張する佐藤宏之氏に対しての批判を行う。佐藤氏への批判を集成し、私見を述べている。

「むすび」において、筆者に対し「「土坑」の用途に関する対立作業仮説の提示がないことを理由とする批判がある」と記されている。確かに否定する以上、その対仮説を提出すべきである。しかし、この論文の中で述べられているものはすべて民俗例なりの事実だけであり、仮説を構築するだけの資料に欠けている。佐藤氏に対する意見についても、仮説に対する理論的な批判(理屈的な批判)を集成し、その上に私見として筆者の理論的な批判を積み上げただけである。

縄文時代の狩猟なりをテーマとする大論文の序章なりとして位置付けるならば成立する文章であろうが、これ一編をもって「論文」とするには、問題をもっている。対仮説を提出する以前の問題であると考える。


後者は、シカ・イノシシを分析するにあたり、積雪という要因が軽視されていることから、積雪量とシカ・イノシシの骨が出土する遺跡の関係を考察したものである。対象は青森県から福井県に至る日本海側の地域とし、研究者による同定が行われ、獣骨の帰属時期、出土遺構が明確な遺跡について報告書を踏査したものである。集計の結果は表1にまとめられ、113遺跡を抽出し、イノシシ、シカのあり方の検討、多雪の影響からシカ猟・イノシシ猟について述べる。

筆者は、多雪と猟の関係、落し穴を否定すること、氏の仮説、猟犬を使った弓矢による猟を常に前提とする。

この論文での問題点は2点ある。一つは、研究者による同定を受けた報告書からの抽出であり、筆者自身の観察がない。2つ目は、氏の論文に共通する点、「標高」を全く視野に入れていない点である。

獣骨は遺跡の立地条件によりその残存状況が大きく異なる。また、これらの遺物に対する調査担当者の認識と分析にあたる研究者の調査への関わりによって、実際の残存状況と報告内容が大きく変わってしまう。評者も報告文では出土したということ以外十分な情報が得られないことを常に体験している。この状況で、報告文だけに依存した分析が成立するとは考えられない。

筆者は常に積雪を問題とするものの、その積雪に関わる標高を問題にしていない。また、積雪以前にイノシシ、シカと分布する標高の関係を問題にしていない。積雪にしても動物の分布にしても地形的な制約を受けていることを全く問題にしていなのである。この様な分析が成立するであろうか。

新たな視点からの分析という点では評価できるものの、基本的な部分でのあり方に問題をもつと考えたため、ここに取り上げた。

石族や落し穴などしか確認できない状況、狩猟という点では2次、3次資料となっている獣骨から、当時の生業を考えることは非常に困難である。民族例が示すとおり、狩猟は地域によって様々な方法が存在している。限られた資料から如何に読み取るか、如何に検証するか、これまでの分析のあり方だけでは不十分であることは確かであり、異なった視点での分析を目指す筆者の今後の活動に期待したい。

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