うだ話9


     うだ話9 考古科学国際会議レポート (第1版)   

タイトル  考古科学国際会議「新世紀における考古科学」
主催   独立行政法人文化財研究所 奈良文化財研究所
開催日   平成15年1月22日、1月23日 
開催場所  奈良県新公会堂

文部科学省のCOE事業の一つ。本年が最終年であり、その成果を広く公開することを目的によって開催された会議。 外国人発表者は英語、日本人は母国語での発表。それぞれ同時通訳だが、事前の打ち合わせ、通訳用原稿があったようで、理解しやすいものであった。

当日は、"INTERNATIONAL CONGRESS on ARCHAEOLOGICAL SCIENCE"英語レジュメと同名の英語、日本語要約集が販売された。また、昨年実施のレジュメ、今回の発表にかかわる『考古科学ニュース』奈文研COE研究拠点というリーフレットが無料にて配布された。

本レポート内容は管理人の理解によるものであり、文責は管理人にある。(この色の所は管理人意見等)

SESSION1  保存科学部門
1.フリアー美術館/サックラー美術館における考古学的翡翠製品、石製品、ガラス製品の最近の研究
  Janet Douglas   フリアー/サックラーギャラリー スミソニアン研究機構

館蔵品のアジア遺物に対する蛍光X線分析。成分比較から産出地の割り出し。 中国新石器時代、漢代翡翠、日本統治期収集の朝鮮三国時代勾玉(ガラス、蛇紋岩、翡翠等)。

館蔵品での比較検討であるため分析成果の解釈は消化不良。

2.マルチデバイス装置を用いた大型非破壊分析の開発
  高妻洋成   奈良文化財研究所

これまで非破壊での分析が困難であった大型遺物を分析するための機器開発。遺物の同位置でX線など4種の分析が可能となるもの。

測定台が1.5×1.5mを大型となり対応遺物範囲が広がるものの、装置全体も非常に大きくなり開発者以外導入できるものでない。大型製品が計測できる小型機の開発が望まれる。(小型で安価なものが開発されれば各地に設置され、データは蓄積されて有効な資料となる。)

3.デジタルラジオグラフィを用いた考古遺物の研究
  肥塚隆保   奈良文化財研究所

レントゲン写真をデジタル化する装置の開発。IPというレントゲンフィルムに代わるものを開発し、写真だけでなくデジタル化するためのもの。これまで入手不可能であったデータがデジタル化でき、情報分析の多様化がはかれる。この装置は自然の放射線も関知する。上部に放射線を発生する遺物を置くことによって材質の違いも判定できる。多数出土する玉関係の材質判定、図面化が簡単にできる。

放射線発生装置がなくても利用できる点、非常に有用なものである。ただIPが簡単に入手できる価格なのか、IPに写されたデータをPCに取り込む機器の価格が問題。(これも普及しないと話にならないような気が。)

4.PEGcon コンピュータプログラム
  Clifford Cook   カナダ保存研究所

出土木材の状況を入力し、PEG濃度の判定を行うソフト。カナダでのデータベースを元にしている。 発掘調査現場には直接関係ないものであり、発表者も保存科学専門者のものであると発言。 プログラムは各国語に対応する前提で作っているので、日本語化していただければとのこと。

日本語バッチファイルをあてるだけで日本語化できるのかプログラムをみていないので不明。国別のデータベースがないと運用できないのではとの質問が出ていた。


SESSION2  遺跡調査法部門
1.日本とイタリアにおける遺跡探査の結果の可視化
  Dean Goodman   マイアミ大学付属考古探査研究所

地中レーダーを用いた地下探査。材質が石、煉瓦等硬質のものである遺跡では有効な手段であることはすでに実証済み。2次元的なデータ提示に終わっていたものを3D化することによって、時間的な経過や遺構の判定に非常な効果を上げることができることを発表。

一般市民の理解にも有効である。

2.ティベル川流域におけるローマ時代都市の調査?都市遺跡における考古探査の応用
  Helen Patterson   イギリス研究所ローマ支部

地中レーダー探査の実例紹介。上記の方法論の実践例。

3.地質探査における最新の成果
  西村 康   奈良文化財研究所

日本における地中探査の実験紹介。地磁気探査、プロトン磁力計、電気探査、地中レーダー等、同地点で様々な探査法を利用し、地下を読みとることの試行錯誤。 福岡県での地中レーダー調査では、周波数を変える事によって本探査のみで非常にはっきりとしたデータが得られた。発掘調査によるデータの確認作業も行われ、成功した例の報告。

成功した例のデータ提示が2次元だった事が惜しまれる。探査する部分がすべて土であることが問題点であることは変わらず、解決すべき問題は多い。


SESSION3  環境考古学部門
環境考古学部門は、松井章氏、藤田正勝氏、藤井裕之氏、宮路淳子氏、丸山真史氏のご努力によりレジュメの日本語訳が当日配布された。

1.世界における環境考古学の発達
  Melinda A. Zeder   自然史博物館 スミソニアン研究機構

栽培家畜化、農耕牧畜経済の確立が人類にとって大きな画期であること、このプロセスを解明する方法には生物科学、物質科学、人間科学等幅広いアプローチが必要と説く。C14年代測定、古DNA研究、アイソトープ分析など考古科学の発達によってめざましい成果が上がっている。メソポタミア、肥沃な三角地帯での大きな成果がある。 メソアメリカにおいてもこれら分析によって驚異的な成果が上がりつつある。日本においても様々な試みがなされ成果が期待できる。

アメリカにおいてはこの分野の有効性が認知され、急激に研究者が増加しているとのこと。批判意見があるのかが知りたかった。

2.フランス、パリ国立博物館における考古動物学の研究
  Jean-Denis Vigne   フランス国立研究機構

パリ国立自然史博物館における考古動物学研究の説明。実際の研究活動、方法が示され、構成員26名中23名が自然科学者とのこと。発掘調査と資料採取を元として、定性的、定量的分析、古DNA分析、安定同位体分析など様々分析を取り入れ成果が上がりつつある。地中海沿岸地域を中心フィールドとするものの世界各地の遺跡を調査しているが、もっとも成果が得られているのは地中海西部でのものである。キプロス島での有蹄類の家畜化、飼育技術等を明らかにした。寓話などにも注目し調査しているとのこと。

フランスでは研究者は少ないとのこと。

3.考古科学が明らかにする先史時代のブタ
  松井 章   奈良文化財研究所

この題材については別途作成予定。松井氏にご了承いただいております。


SESSION4  古年輪研究部門
1.ポーランドにおける木製品の年輪年代測定
  Tomasz Wazny   ニコラスコペルニクス大学

新鉄器時代の住居跡等を8世紀BCと判定し、今に残る木造教会の建築年代を判定。

2.中国北西地方の年輪年代学:最近の進歩と将来の見通
  Qibin Zhang   中国科学アカデミー

中国西部、青海省での資料収集の状況。乾燥地帯であり古墓に使用された木材から資料を収集。原生樹木からの資料収集についての発表。本分野は始まったばかりであり、これからの展開が期待できる。非常に精緻な調査、分析がされている。

3.年輪年代学の最新情報
  光谷拓実   奈良文化財研究所

国内における年輪年代学に実践報告。弥生時代、古墳時代等これまで話題になった例以外にも、歴史時代の遺物、仏像等比較的年代が明らかになっているものを測定して、年輪年代学の有効性を説明。

良好な資料が得られれば(外皮まで完全に残った状態)、資料から絶対年代が割り出せる唯一の年代測定法であることは間違いない。しかし、完全な状態での資料採取は困難であり、データの検討、推定部分の幅をどれぐらい持たせるか等、多人数による検証が必要である。

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