大阪府における開発事業等に伴う埋蔵文化財の取扱い基準

大阪府における開発事業等に伴う埋蔵文化財の取扱い基準

1.埋蔵文化財として取扱う範囲の把握・決定・周知に関する基準

(1)埋蔵文化財として扱うべき遺跡の範囲について

(1)文化財保護法(昭和25年法律第214号。以下「法」という。)に基づいて周知の埋蔵文化財包蔵地として扱う区域は、本「基準」別表1に示す要件により「大阪府文化財情報管理システム」(以下、「システム」という。)に登載した範囲とし、「システム」により1万分の1の縮尺で表示した場合の範囲とする。

(2)法に基づいて取扱う埋蔵文化財の種類及び時代は、本「基準」別表1に示す要件により「システム」に登載された内容とする。

(3)周知の埋蔵文化財包蔵地の全体又はその一部が過去の土木工事等により消滅していることが明らかな場合は、その範囲を「システム」に登載し、土木工事等に際して法に基づく届出等を要しない範囲として取扱うものとする。

この場合の届出等を要しない範囲は、「システム」により1万分の1の縮尺で表示した場合の範囲とする。

(4)周知の埋蔵文化財包蔵地の区域・種類・時代等の変更及び取扱いの変更に関する手続きは別に定める。

(2)埋蔵文化財包蔵地の把握と周知の埋蔵文化財包蔵地の決定について

(1)埋蔵文化財包蔵地の把握は、各市町村教育委員会が行うことを基本とする。

(2)府教育委員会は、把握された埋蔵文化財包蔵地について当該市町村教育委員会と協議し、法に基づく取扱いを行うため「システム」に登載し、周知の埋蔵文化財包蔵地として決定する。

(3)新たに発見された埋蔵文化財包蔵地については、法第57条の5及び第57条の6に基づく遺跡発見の届出等により周知の埋蔵文化財包蔵地として取扱うことを基本とし、府教育委員会が届出等を受理した日をもって周知の埋蔵文化財包蔵地として取扱うものとする。ただし当該文化財包蔵地が政令に定められた市にある場合は、当該市教育委員会が届出等を受理した日をもって周知の埋蔵文化財包蔵地として取扱うものとし、当該市教育委員会は速やかにその旨府教育委員会に報告するものとする。

(4)周知の埋蔵文化財包蔵地として扱う区域・種類・時代等の変更及び取扱い内容の変更については、上記1−(1)の規定による連絡を府教育委員会が受理した日をもって取扱うものとする。

(3)把握された埋蔵文化財包蔵地の周知について

(1)府教育委員会は、決定した周知の埋蔵文化財包蔵地について「システム」により適正に情報管理を行う等、資料・情報の整備その他周知の徹底を図るため必要な措置を講ずるものとする。

(2)各市町村教育委員会は、地域に密着して埋蔵文化財の状況を適切に把握し、「システム」の情報更新を図るため府教育委員会と綿密な連携を図り、管内に関して「システム」による情報と同一内容の資料を備え、その適正な情報管理と周知の徹底に努めるものとする。

また、このため各市町村は「文化財分布図」等を作成するなどの措置を講ずることが望ましい。

2.記録保存のための発掘調査等の措置をとる場合の取扱い基準

(1)発掘調査の要否について

周知の理蔵文化財包蔵地における開発事業に伴う土木工事等に開しては、法に基づく届出等に基づき、当該土木工事等が本「基準」別表2に該当する要件により、記録保存のための発掘調査等、必要な措置を構ずるものとする。

(2)工事の種別及び工事内容による取扱い基準について

周知の埋蔵文化財包蔵地における開発事業に伴う土木工事等については、直接当該土木工事等によって理蔵文化財が破壌される場合を除いて、原則として工事の種別により本「基準」別表3に示すとおり取扱うものとする。

(3)記録保存のための発掘調査範囲の決定基準

上記(1)、(2)により記録保存のための発掘調査の措置を講ずるとされた場合、当該開発事業等の予定地について発掘調査を実施する範囲は、本「基準」別表4に示す状況等が想定又は確認されている場合を除いて、原則として上記(1)、(2)による発掘調査の措置を要する要件を満たす部分とする。

ただし、調査の進捗等により一体的な記録保存等の措置が必要と判断される場合はこの限りではない。

3.記録保存のための発掘調査への民間調査組織の導入基準

(1)民間調査組織の導入に開する基本方針

(1)地域の埋蔵文化財保護の観点から開発事業等にかかる記録保存のための発掘調査については、当該教育委員会等公的機関において実施することを基本とする。

(2)民間調査組織の導入については、当該教育委員会等公的機関による記録保存のための発掘調査の実施が、困難又は著しく遅延することが避けがたい場合に限り、下記(2)の要件により行うことができるものとする。

(3)民間調査組織の導入により、当該市町村教青委員会の発掘調査等文化財保護体制の整備が滞ることがないよう留意することとする。

(2)民間調査組織を導入する場合の要件について

(1)民間調査組織の導入に際して当該市町村教育委員会は、事前に府教育委員会と協議することとする。

(2)民間調査組織の選定に際しては、府教育委員会並びに市町村教育委員会は、その組織が記録保存のための発掘調査を適正に実施する能力を有し、担当職員が十分な資質を有することを、過去の実績等を確認の上精査することとする。

(3)民間調査組織の導入は、当該市町村教育委貝会の発掘調査体制に組み込む形態で行うものとし、発掘調査の実施、調査報告書の刊行、出土品等調査資料の帰属等必要事項を記載した書面により事業者、民間調査組織、当該教青委員会の三者の合意事項等を予め明確にして行うこととする。

なお発掘調査の実施に際しては、当該教育委員会は調査の過程において必要に応じ監査指導を行うものとする。

4.その他

(1)基準の見直し

本「基準」は、社会状況の変化、学間水準の変化に応じ、大阪府教育委員会、各市町村教育委員会の協議の上、必要により見直すことができるものとする。

(2)適用

本「基準」は平成15年5月1日より適用する。


(別表1)

法に基づいて取扱う埋蔵文化財の種類及び時代の範囲
基準の要素 区分 取扱い
時代による取扱い 中世までに属する遺跡 原則として全てを埋蔵文化財包蔵地として取扱う。 ただし、本表の種類による取扱いにより除外すべきものは除く。
近世に属する遺跡 地域において必要なものについて埋蔵文化財として取扱う。 ただし、中世に属する遺跡と一体をなす江戸時代前期までの遺跡は上記中世以前に属する遺跡に準じて取扱う。
近代以降に属する遺跡 地域において特に重要なものについて埋蔵文化財として取扱う。
種類による取扱い 法第2条の4で規定される記念物の内、土地に埋蔵されている文化財 この表の時代による取扱いを踏まえ、埋蔵文化財包蔵地として取扱う。
ただし、下記に示す状況が明確に確認される場合は、埋蔵文化財としての取扱いから除外することができるものとする。
(1)二次的な堆積や遺物包含状況が希簿な遺物包含層のみで構成される場合
(2)人為的痕跡に乏しい白然遺構のみで構成される場合


(別表2)

法による届出等に基づいて行う発掘調査等の必要な措置に関する要件
必要な措置 要件 備考
発掘調査 (1)工事等により埋蔵文化財が損壊される場合 ただし、この表「工事立会」(1)(2)(4)に該当する場合は、この限りでない。
(2)掘削が埋蔵文化財に直接及ばない場合にあっても、工事等よって地下の埋蔵文化財に影響を及ぼすおそれがある場合 保護層を設定することにより、工事等による地下の埋蔵文化財への影響が回避される場合は、この限りではない。
この場合、保護層のの厚さは概ね30cmを基本とする。
(3)恒久的な工作物の設置により相当期間にわたり埋蔵文化財と人との関係が絶たれ、当該埋蔵文化財が損壊したのに等しい状態となる場合 「基準」2−(2)に基づいて工事の種別により取扱いを定める。
工事立会 (1)工事等による損壊又は影響を及ぼすおそれのある範囲が狭小で通常の発掘調査の実施が困難な場合 この場合の狭小な範囲とは、工事等の掘削幅が概ね1m以内の場合とする。
ただし、個々の掘削等が狭小な範囲であっても複数の掘削等により損壊される場合は、その施工範囲全体をこの表「発掘調査」@による取扱いを行うことを基本とする。
(2)工事等による影響が軽微な場合 軽微な影響とは、工事による掘削が遺物包含層の一部にのみ及ぶなどの場合とする。
(3)この表による発掘調査の要件に該当しない工事等で、保護層の確保等工法上、施行に際して埋蔵文化財保護について確認及び指導等が必要な場合 過去に埋没保存等の措置を行った箇所等を含む。
(4)発掘調査の実施上、安全の確保が普しく困難な場合 緊急性等やむを得ない場合に限ることとする。
慎重工事 (1)工事等による掘削及び影響が埋蔵文化財に及ばない場合 既住の調査成果や試掘調査・確認調査により、新たに埋蔵文化財への損壊や影響が生じないことが明確な場合に限る。
(2)工事等の範囲に埋蔵文化財が現存しないことが明らかな場合
(3)試掘調査・確認調査により記録保存等の措置を必要とする状況が確認されなかった場合


(別表3)

埋蔵文化財の損壊を伴わない場合の工事の種類及び工事内容による取扱い
工事の種類 取扱い 備考
道路 発掘調査 将来にわたり地下埋設物等の地下利用の可能性のない下記の部分は除く。
(1)一時的な工事用道路、道路の植樹帯、歩道等の部分
(2)高架・橋梁の橋脚を除く部分
(3)道路構造令に準拠しない農道・私道
鉄道 発掘調査 道路に準じて取扱う
河川(堤防・河川敷) 発掘調査 高水敷については、利用計画等により埋蔵文化財が損壊又は影響が及ぶ場合以外は除く。
ダム(堤体・貯水池) 発掘調査 貯水池については常時満水位までを対象とし、それより上位は除く。
恒久的な盛土・埋立 厚さ3m以上 発掘調査 ただし、厚さの最大値が3m以上となる傾斜地における盛土施工については、埋蔵文化財の内容・性格等の把握が可能な範囲で、発掘調査の実施について調整することができるものとする。
恒久的な盛土・埋立 厚さ3m未満 慎重工事 下記の場合は厚さ3m未満であっても発掘調査の対象として扱う。
(1)土壌等が軟弱なため埋蔵文化財に影響を及ぽすおそれがある場合
(2)古墳、土塁、城館、濠等、地表に顕在する埋蔵文化財を含む場合
建造物 慎重工事 ただし、古墳、土塁、城館、濠等、地表に顕在する埋蔵文化財を含む場合で、工事によってその景観等が大きく改変される場合は、発掘調査等の措置を執ることができるものとする。
公園・グラウンド・平面駐車場等 慎重工事 ただし、古墳、土塁、城館、濠等、地表に顕在する埋蔵文化財を含む場合で、工事後にその利用等により埋蔵文化財の損壊等の影響を生ずるおそれがある場合は、発掘調査等の措置を執ることができるものとする。


(別表4)

記録保存のための発掘調査を要さない範囲
対象とする区域の状況 備考
二次的な堆積が明らかな遺物包含層のみで構成される区域 ただし、包含される遺物が出土文化財として、将来にわたり保存・活用を図る必要性があると判断された場合はこの限りでない。
遺物包含状況が希簿な遺物包含層のみで構成される区域 ただし、本来遺物が多量に出土することが希な時代の場合や完形品や遺物の遺存が良好な場合、祭祀関連等希少性が重要な場合等はこの限りではない。
人為的痕跡に乏しい自然遺構のみで構成される区域 ただし、対象とする遺跡の立地や形成過程等を解明する上で不可欠な部分についてはこの限りではない。
単独の遺構が点在する種類の埋蔵文化財包蔵地における空閑地に当たる区域
明確な遺構を伴わない耕作等の生産遺跡の区域
ただし、古墳群・窯跡群等の埋蔵文化財で点在する範囲が広範なものの空閑地であっても、それらを相互に開連づける状況や関連する遺構の存在が確認された場合はこの限りではない。

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貝塚考古学研究所

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