大阪府内における埋蔵文化財本発掘調査の積算基準

    「大阪府内における埋蔵文化財本発掘調査の積算基準」
                                 大阪府教育委員会発行

I 趣旨

この基準は、平成12年12月14日付け文化庁次長通知「埋蔵文化財の本発掘調査に関する積算標準について(通知)」(以下、文化庁次長通知という。)に基き、大阪府内において開発事業に先立って実施される埋蔵文化財発掘調査の積算について、必要な事項を定めるものとする。

II 適用

この基準で取り扱う本発掘調査とは、各種の開発事業に先立ち、文化財保護法の手続きを踏まえて発掘調査を担当実施する地方公共団体及び法人等の組織(以下、調査組織という。)が行う、現地における発掘調査、出土遺物・記録類等の整理、及び報告書の作成・刊行に到る業務の全てをいう。

各調査組織は、調査費の積算に当っては文化財保護関係法令及びこの基準に従い、その発掘調査を適切に実施するために必要な費用を算定するものとする。

なお、以下に示す発掘調査の作業工程等及び積算のための標準歩掛等は、遺跡の種類として標準的な遺跡である集落遺跡を対象として扱う。その他の遺跡については、本基準V―1の規定に拠り積算をおこなう。

III 作業工程及ぴ記録成果等

積算の対象となる、発掘調査(現地調査)・出士遺物等整理及び報告書作成に係る作業工程、並びに標準的に作成される記録成果等は、次のとおりとする。

1.発掘調査(現地調査)に係る作業工程
(1)事前準備
(2)発掘・掘削作業
(3)図面等記録作成・写真撮影
(4)埋戻し・現地撤収
詳細作業工程及ぴ記録成果等については、別表‐1に例示する。

2.出土遺物等整理及ぴ報告書作成に係る作業工程
(1)記録類の整理
(2)出土遺物の整理(洗浄・選別・注記・接合・復元・資料化(分類・検討))
(3)調査成果の検討(分析・考察)
(4)実測・製図
(5)出土遺物の写真撮影
(6)原稿執筆
(7)版下作成
(8)割付
(9)報告書公刊(入稿・校正・納品)

IV 本発掘調査の積算

発掘調査について積算するためには、予め調査対象遺跡の状況の把握を十分に行う必要がある。調査対象地に近接した場所の調査成果があれば、それを用いて積算が可能な場合もあるが、情報が不足するときは、発掘調査に先立って試掘調査もしくは確認調査を実施して必要な情報を得ることが必要である。

これらの情報により、機械掘削若しくは人カ掘削(床掘)が可能な土層の厚さ、調査人力掘削(本基準IV―1―(4)―(ウ)参照)の対象となる遺物包含層等の厚さ、及ぴ湧水量等の伏況を把握する必要がある。

1.発掘調査(現地調査)積算基準

現地調査においては、本基準III―1及び別表―1に示すような各工程の諸作業がある。現地調査費用の積算対象である作業は、諸準備、機械及び人カによる掘削作業、それらの作業によって現れた面(単一又は複数の遺構面)における手順を踏んだ遺構、遺物の検出作業、記録作成(遺構及ぴ遺物出土状態の実測図・写真撮影等)作業、検出作業中の遺物・遺構の養生・管理に要する諸作業、調査終了後の埋戻し、調査全期間の調査現場の維持管理、現場周辺を含む安全管理等の諸作業等である。

これらの作業に係る期間及び経費は次のように求めるものとする(別表―2参照)。

【条件の設定】
(1)調査地条件の標準的モデル
本基準では、調査対象単位の標準条件を次のように設定する。漂準から外れる場合には、必要に応じて別表2により補正を加えるものとする。
(ア)立地       平地
(イ)面積       300平方メートル以上
(ウ)調査人力掘削層厚 20cm以上
(工)作業工程     調査単位全面積の掘削が一工程で施工可能

(2)調査体制の標準的な構成

前項の標準的モデルに対応する現地調査体制(バーティー)の標準的構成は、以下のとおりとする。外業補助員、外業作業員の員数等は、調査の規模・状況に応じて適正な数に調整するものとする。
(ア)調査担当職員 1人/日
(イ)外業補助員  3人/日(外業作業員(調査人力掘削)の30%。並行して出土遣物等の整理を行う場合は、内業補助員を同数必要とする。)
(ウ)外業作業員  10人/日
(工)月稼働日数  20日

【積算基準】
(3)現地調査期間

現地調査期間(日)=準備期間(日)+機械掘削及び人力掘削(床掘)(日)+調査人カ掘削(日){調査人カ掘削総土量(立法メートル)÷(調査人カ掘削土量(立法メートル)/人・日x補正係数x一日当り掘削作業員数)}+記録作成等(日)+後片付け(日)

(4)掘削作業

(ア)機械掘削

表土・盛土及び無遺物層等の掘削は、通常機械掘削を行う。使用する機械はバックホウ0.6立法メートル級(鉄板装着バケット付、排出ガス対策型)を標準とし、調査現地及ぴ周辺の諸条件等によっては、より小型のバックホウを使用する。日当りの施工量と積算方法は、「大阪府土木部建設工事積算基準」(以下、府土木部積算基準という。)に準拠する。

(イ)人カ掘削(床掘)
通常機械掘削の対象となる部分について、諸条件により人カで掘削する場合は、府土木部積算基準に準拠し、床掘を適用する。

(ウ)調査人力掘削
調査人力掘削とは、遺物包含層の掘削及び遺構検出・遺構掘削等を含むものをいう。なお、掘削土の排出はベルトコンベアの使用を標準とする。発掘調査における作業の中心をなす本工種の歩掛は、別表―2にその基準値を記載する。

(5)掘削土運搬
掘削土を運搬する必要がある場合は、ダンブトラック等現場条件に応じた方法により運搬するものとする。施工方法・施工歩掛及び積算方法は、府土木部積算基準に準拠する。

(6)掘削土埋戻し
掘削土の埋戻しはバックホウ及びブルドーザで実施する。機械による埋戻しが困難な場合は人カで行う。いずれも施工方法・施工歩掛及び積算方法は、府土木部積算基準に準拠する。

(7)諸作業
諸作業とは、掘削作業以外の現地での調査準備から撤収に至るまでの種々の作業(別表―2 注2)をいう。これらに要する費用は、請負施工の場合は共通仮設費に計上される。直営工事等の場合は、諸作業に要する作業員数は調査人力掘削作業員数の30%を標準とする。

(8)記録作成等
地形測量、遺構実測図・遺物出土状況実測図等作成及ぴ写真撮影等の記録作成作業には職員を補佐する外業補助員を必要とする。また、現地調査と並行して出土遺物の水洗・注記等を行なう場合は内業補助員を追加するものとする。

2.出土遺物等整理及び報告書作成に係る積算基準

本基準III−2に作業工程を示す出土遺物・記録類の整理及び報告書作成までの業務に際しては、職員を補佐する内業補助員を必要とする。現地発掘作業と並行して出土遺物等の整理を行う場合の補助員数の標準として前項に示すものは、その一部である。

現地調査終了後に確定する遺構、出土遺物の遺存状況や数量は個々の調査毎に大きく相違し、また調査組織毎の整理体制も一様ではない。従って、整理作業等に従事する補助員の員数及び整理等期間については、文化庁次長通知に付随する、平成12年9月28日付け「埋蔵文化財の本発掘調査に関する積算標準(報告)」記載の標準数値を参考とし、各調査組織において個々の発掘調査に応じた適切な積算を行なうものとする。

3.発掘調査経費の構成

発掘調査に係る経費内訳は、以下のような費目で構成される。実際の構成は調査体制、規模等により変動する。また個々の内容については、当該調査組織の規定によるものとする。

(1)共済費
直接雇用の補助員・作業員等・の労災保険、社会保険料等。

(2)職員給与等
給与及ぴ共済費等。各組織の規定に準拠する。

(3)賃金
直接雇用の補助員・作業員等の賃金。各組織の規定に準拠する。

(4)報償費
調査指導のための必要分野学識経験者等の招聘等。

(5)職員旅費
担当職員の調査現場までの管内旅費、事務連絡旅費、資料調査旅費等。

(6)需用費
・発掘調査に係る消耗品、発掘用具、整理用品、写真用品、写真DPE、事務用品等。
・修繕費   機材修理等
・燃科費   車両及び機材の燃料等
・光熱水費  電気・ガス・水道等科金
・印刷製本費 調査報告書の印刷製本費

(7)役務費
電話・通信科、郵便料、塵埃収集科、屎尿汲取科等

(8)委託料
(ア)写真測量 発掘調査における測量作業の効率化を図るため、工程に応じて実施する。カメラステーションはヘリコプターを標準とし、また図化縮尺は20分の1を標準とする。

(イ)基準点測量等 
発掘調査で実施する各種測量の基準とし、調査位置の復元を可能とするため、3級・4級の基準点及び水準点の設置を実施する。近隣に使用可能な既設点がある場合は一部省略できる場合がある。

(ウ)写真撮影
調査現地及ぴ室内で遺構・遺物等の記録作成のための写真撮影を必要な種類及ぴ回数で実施する。カメラ等の使用機材はその都度適切に選択する。

(工)自然科学的分析
年代測定、花粉分析・土壌分析・樹種同定等による古環境復元等の理化学的分析については、その調査に必要かつ有効なものに限り実施する。

(オ)保存処理等
出土した木製晶、金属製品、動植物遣体及び検出された特殊な遺構等を対象とする保存処理等は、通常の保管状態では著しく劣化が進行するもの等、文化財の保存・活用のために必要かつ有効なものに限り実施する。

(カ)大規模仮設等設計委託

(9)使用料及ぴ賃借料
現場事務所、便所、車両、掘削・土留・保安・撮影測量機材等、発掘調査に必要な各種資・機材の賃借科。発掘調査の遂行に必要な土地の賃借料等。

(10)工事請負費
掘削等を発掘調査に伴う工事として請負施工に付する場合。機械掘削・人カ掘削(床掘)・調査人力掘削等掘削に関する工事、付帯する諸作業、及ぴ土留・足場・電気・水道等仮設に関する工事、現場管理・安全に関すること等全般を含む。

(11)事務費(諸経費)
発掘調査事業の実施に係る事務的経費等。調査組織の規定による。

(12)その他必要な経費

4.現地調査に必要な施設・設備・機材等
別掲(別表―3)

V 特記事項

(集落遺跡以外の遣跡)
1.本基準で対象とした集落遺跡以外の古墳・山城・生産遣跡・都市遺跡等については、府内の地域や遺跡による差異が極めて大きい。このため、これらの発掘調査の実施に当っては、調査経費・期間、現地調査及び整理等に従事する補助員数等について、各調査組織において、本基準に準じ個々の調査案件に応じた適切な積算を行うものとする。

(請負施工による現地発掘謂査)
2.調査人力掘削等を、発掘調査に伴う工事として請負施工に付する場合の積算は、本基準、「大阪府教育委員会埋蔵文化財発掘調査に伴う工事積算基準(乎成14年7月改定)」及び各調査組織の基準に準拠する。請負施工に付する場合の機械掘削他、上記の積算基準等で規定する工種以外の積算は、府土木部積算基準に準拠するものとする。

(直営施工による現地発掘調査)
3.遺跡現地の作業を請負施工に付さず、調査人力掘削等を直営により実施する場合は、本基準及ぴ各調査組織の基準に準拠するものとする。

(基準の改正)
4.この基準の内容は、必要に応じて適宜検討を行い、所要の改正を行うものとする。

附則
この基準は、平成18年4月1日から施行する。

  *WEB化にあたり、別表1、2、3は省略した。

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