うだ話11


     うだ話11  物質資料からのアプローチ限界

考古学は、土器などの遺物、柱穴、墓穴、古墳などの遺構から、その遺跡の歴史を分析するものです。近年、目にする考古資料絶対論的(考古資料=物質資料としての取り扱いで)、考古学優位論的な発言に対して、物質資料のもつ限界を理解した上での発言であるのか、非常に危惧しています。ここでは、現在の家の破棄のあり方を例にして、物質資料から歴史をアプローチする場合の限界性について示したいと思います。


ケース1
通常あり得ることはほとんどありませんが、何らかの要因である家屋がそのままの状態で破棄、朽ちていく状況を考えます。

まず、今いる私の部屋がどうなるか?私の部屋には複数台のPC、書籍類で充満しています。そのほか、木製机の中には様々小物類が入っています。さて、これがこのまま破棄、朽ちた場合、何が土の中に残るか?有機物でできた書籍類、木製品は一番先に朽ちていく。その後、スチール製の本棚、PCラック、各種金具類、PC内部の金属製品が錆びてなくなっていく。最終的に残るものといえば、燃えない限り消滅することのない石油化学製品、具体的にはPCの外装、マザー、ロジックボード、CD類、カセットテープ外装、様々な小部品ぐらい?

さて、この部分を300年後発掘して、この部屋の用途がわかりますか?住人の私のことがわかりますか?

家一軒に視点を移してみましょう。居間、台所、寝室、子供部屋などでも、もののあり方の基本は上記の部屋と同じ状況が考えられます。ただいくつかの部品が増えます。居間など共同生活空間では、テレビ、ビデオデッキの外装、茶碗、皿などの陶磁器類、子ども部屋ではPCの外装、おもちゃなど。おもちゃという認識が300年後にできれば(バトロイドバルキリー、クラッシュギアやポケモンキャラが理解できれば)、子供のいる家庭との推定は可能ですが、家族の人数はいえるか?

食器類で家族数は推定できるとの反論が出そうですが、人数分の食器があるかといえば、否です。皿など2〜3枚程度のものが数種あったりし、私自身、今、我が家で所有している食器だけで家族人数が表せるかというと、できないという答えとなります。

このケースで、遺構、遺物から何がいえるか?、非常に心許ないとしかいえないのでは?


ケース2
上記は特殊な条件下での家屋の遺存状態をケースとしましたが、通常の家屋の取り扱いを考えてみましょう。

住人がいなくなったり、引っ越ししたりする。その後、家屋は中古売買や賃貸しないとすると、土地を売るために解体されます。その場合、家財道具等はすっかり持ち出され、解体後に残るものといえば、約何十平米かの一階面積の規模をもつヌノ基礎の痕跡が残るのみです(縦横約0.8mの規模の独立基礎で、5間X6間の住居跡)。こうなると、住民の構成を考えるなどとんでもない話です。

中世の遺構のあり方をみた場合、このパターンに非常に類似しているといえないでしょうか。500平米前後の調査区で、建替を含め数棟の掘立柱建物、井戸、溝・・・。 人が住んでいたことを表す住居跡、井戸や溝に残ったゴミ。

極言すれば、人が住んでいたこと以外全く何の情報も残されていません。


ケース3
個別の家屋だけでなく、町会全体(集落全体)では何かいえるか?

集落内ですべての家でケース1の場合で遺存したとすると、遺物の種類、量で一定の家族構成の差などの推定は可能でしょう。おもちゃなどの特定の遺物に注目すれば、子供のいる家、いない家などは判別可能であす。しかし、その子供が3世代目の孫にあたるのか、2世代目の子にあたるのかは何をもって分別するか?また、大家族であるか、核家族であるかなど、全く判別がつかない。

家屋の規模で階層を考えるなど良くとられる手段ですが、まず、個人の住宅自身、その階層に見合ったものを建築しているかといえば、否です。それぞれ一生かかるような大きな借入金によって建設している。収入が安定しているとされる大企業なりの社員が大きな借入をし易かったりして、大きな家屋を建てる。自営業者で普段の収入は多いものの、借入は小さく必要最小限の家屋しか建てなかった。この場合、家屋の規模では単純に階層はいえないのでは? この場合は「富」という観点ですが・・・うちは貧乏です(^^。  

また、長屋住宅など共同住宅を個人所有1棟として認識してしまった場合、個人住宅との格差は大きく、長屋住宅の住人は「地域の支配者」となり得る?(^^


以上、非常に極端な話であることは承知の上、あえて物質資料だけで歴史へのアプローチをした場合の限界性を述べました。歴史観、民俗学等の援用などを全く除外し、「もの」そのものだけで考えた場合、この範囲のことしか判明しません。この部分をしっかり認識した上で、「もの」と対峙していく必要があると考えています。もちろん、人類の長い歴史を解明するために、無くてはならないことに代わりありませんが、「考古学」。


次回予告 「ない、無い」ということ。
       考古学に関わる人分類。    書く時間があれば・・・・・。去年書いた方を先に出した方がいいかも?(笑)

[ うだ話12へ ]
[ うだ話へ ] [ 物質資料からのアプローチ限界 ]
HOME

Copyright (C) 2002-2009 麻夢路  貝塚考古学研究所

SEO [PR] お金 ギフト  冷え対策 特産品 動画無料レンタルサーバー SEO