うだ話54 | ||
うだ話54 理論と現実(ここでは技術)
理論と現実のギャップの1例を。
HONDA F-1 ターボ時代、どうやってエンジンパワーを上げるかを設計陣は考えました。理論上では、シリンダーのボア(直径)を広げてショートストローク(ピストンの上下距離を短くすること)でパワーはいくらでも上がることは明らかです。ただ、ボアを広げると燃焼効率が下がる(プラグから混合気に点火したときの火の周り方が悪く、うまく混合気が燃えないこと)ことも明らかでした。しかし、この問題は設計上解決できるとの判断でビックボア、ショートストロークのエンジンを設計しました。
しかし、これがうまく行かない。理論どおりには行かなかったのです。何度も何度も設計、試作、テストを重ね、ガソリン(トルエン100%)やターボブースト(2.5バール)を実際に組み合わせて行きやっと常勝HONDAのエンジンを作りあげたのです。
ターボファンですが、設計上はじき出した数値で製作を依頼しました。しかし、依頼されたIHIは設計図を見て「これは作れない。」と最初判断しました。当時の技術では、それだけの圧力に耐えられるファンのフィン(羽根)が作れなかったのです。これまた、試作、テストを重ね、何とか要望にこたえられるターボファンを作り出したのです。
机上の理論では「計算上こうなる!」となっても、現実に移した段階でたちまち頓挫する。それを解決するのは理論ではなく実際の技術の積み重ねであったのです。
理論と現実の間には大きなギャップが存在することを証明していると思いませんか?
だからいつも思うのです。理論に異議あり!
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