うだ話66


     うだ話66  工事の中断

新聞を騒がす「工事中に銅鐸発見!」なんかありますよね。あれは、「不時発見」と言って、遺跡と認識されていない所から出た場合です。これは、文化財保護法で規定されています。

第96条 「遺跡の発見に関する届出、停止命令等」

土地の所有者又は占有者が出土品の出土等により貝づか、住居跡、古墳その他遺跡と認められるものを発見したときは、第92条第1項の規定による調査に当たつて発見した場合を除き、その現状を変更することなく、遅滞なく、文部科学省令の定める事項を記載した書面をもつて、その旨を文化庁長官に届け出なければならない。ただし、非常災害のために必要な応急措置を執る場合は、その限度において、その現状を変更することを妨げない。

2 文化庁長官は、前項の届出があつた場合において、当該届出に係る遺跡が重要なものであり、かつ、その保護のため調査を行う必要があると認めるときは、その土地の所有者又は占有者に対し、期間及び区域を定めて、その現状を変更することとなるような行為の停止又は禁止を命ずることができる。ただし、その期間は、3月を超えることができない。

5 第2項の場合において、同項の期間内に調査が完了せず、引き続き調査を行う必要があるときは、文化庁長官は、1回に限り、当該命令に係る区域の全部又は一部について、その期間を延長することができる。ただし、当該命令の期間が、同項の期間と通算して6月を超えることとなつてはならない。

となっています。最大で6ヶ月工事が中止になります。ただ、これが実際に発動されたということは無いそうです。基本的に地元の教育委員会がお願いして、開発者の協力のもと工事を中止してもらって調査をします。

調査費の負担ですが、基本的にこちらも開発者負担です。ただ、文化庁も数年前から、各教育委員会が持っている国庫補助事業費(個人住宅や零細企業開発、ほ場整備に対応するための費用)を使ってもかまわない、保護するのだから積極的に使いなさいと通達を出していまして、ほとんど場合は各教育委員会が調査を負担するようになっています。

ただし、元々の国庫補助事業費が少ないと、負担できなかったりします。府県を通じて文化庁に増額を求めて調査する場合もありますが、これだと時間がかかりすぎる。府県内部で調整する場合もままあるようです。

そこで、遺跡と認識されている場所から、確認調査他が終わった後、工事に着手して新たに遺跡等が発見された場合はどうなるか。

これが、文化財保護法に規定がありません。よって、中止を求めたりすることは基本的にはできません。

ただ、規定が無いから中止を求めることが完全にできない訳でなく、遺跡が出てきたので調査させてください、ちょっと工事を止めてくださいとお願いすることは可能です、お願いですから。第93条の届出で調査をするときもお願いです。これが行政指導と呼ばれるものですが、実際はお願いです。

第96条は、第92条第1項の規定による調査以外、すべてについて適用できるみたいにも読めますが、条の名称が「遺跡の発見に関する届出、停止命令等」になっています。新しく遺跡として発見されて所が対象、すでに遺跡であるところは除外されるとの解釈ですね。

法で決まっているように見えますが、実際は穴だらけというか、私は「底が抜けた桶」と言っています。側だけあって、何も受けられない。各地の教育委員会が一所懸命お願いして、開発者に工事を待ってもらって、費用を負担してもらって、調査をしているのです。

それと、第93条の届出に対して府県から通知として回答書が送られてきます。調査を実施してください、教育委員会の職員が工事に立ち会いますとかの指示が書いてあります。これも、法的に効力はほとんどありません。

また、よその県は知りませんが、私の所属している所では、

なお重要遺構等が発見された場合、保存等の協議を行う場合がある。
と書かれています。これも法的な根拠がありません。

「埋蔵文化財」となっているものは、各地の教育委員会が何度もお願いして、お願いしてやっと調査しています。開発者の尋常以上の協力のもと成立しています。


なお、「史跡」に指定されているものは扱いが別格ですよ。こちらは文化財保護法が細かく規定しています。某通信会社がやったのはこっちです。

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